Matt Bochnakは2016年、月1,000ドルをガレージのバイク修理から作っていた
Matt Bochnakがやっていたことは、かなり普通だった。
壊れたバイクをガレージに入れる。
部品を外す。
原因を探す。
直す。
そして客から修理代をもらう。
Mattは機械工学のエンジニアとして働きながら、副業でバイク修理をしていた。
長年バイクを触ってきた経験があったため、近所の人からバイクを預かって修理すれば、その技術をそのままお金に変えられた。
ただ、この仕事には分かりやすい限界がある。
1台直せば、1台分の修理代が入る。
次の売上を作るには、また別のバイクを直さなければならない。
1日に作業できる時間には限界があるし、ガレージに置けるバイクの台数にも限界がある。
ところがMattは、修理するときに一つ変わったことを始めた。
*作業をカメラで撮影した。*
ただ直して終わるのではない。
どの部品を外したのか。
なぜそこを確認するのか。
どうやって故障を見つけたのか。
どうやって元に戻したのか。
それを映像として残した。
やがてMattは、その映像をインターネットで公開するようになる。
これが後に「How-To Motorcycle Repair」という事業へ変わっていく。
2016年ごろ、Mattの副業は月800〜1,000ドルほどを生んでいた。
まだ巨大なビジネスではない。
だが、このころにはすでに面白い変化が始まっていた。
実際に客のバイクを直して受け取る修理代より、
*バイクの直し方を撮影したコンテンツから入ってくるお金のほうが大きくなり始めていた。*
Matt Bochnakは1回のHonda CRF250R修理を約3時間の動画商品に変えた
Mattが作ったのは、数分で終わる簡単な解説動画だけではなかった。
たとえばHonda CRF250Rのエンジンを修理するとする。
普通の修理業者なら、
バイクを預かる。
エンジンを分解する。
故障している場所を直す。
組み直す。
客に返す。
そこで仕事は終わる。
Mattは違った。
その工程そのものを撮影していた。
どの部品から外すのか。
どこを確認するのか。
どうやって分解するのか。
どうやって組み直すのか。
一つの修理作業を、別のバイク所有者が自分で再現できる教材に変えていった。
Honda CRF250Rのエンジン修理では、合計約3時間に及ぶ動画セットを20ドル台で販売していた時期もある。
ここで、修理という仕事の性質が変わる。
目の前の1台を直すだけなら、その客からしかお金は入らない。
しかし、その方法を動画にしてしまえば、同じCRF250Rを所有している別の人にも販売できる。
アメリカの別の州にいる人にも売れる。
数か月後に故障した人にも売れる。
数年後でも、その車種を修理したい人がいれば買ってもらえる。
Matt本人がその場にいる必要もない。
*1回の修理から、何度でも販売できる商品が残るようになった。*
しかもMattは、教材を作るためだけに新しい仕事を用意する必要がなかった。
普段やっている修理そのものが教材だった。
仕事をする。
その仕事を撮影する。
編集する。
次に同じ問題で困った人へ売る。
これまで修理が終われば消えていた経験が、少しずつ商品として蓄積されていった。
How-To Motorcycle Repairは2016年、月約1,000ドルの中で動画収入が修理代を上回った
この事業が面白いのは、Mattが最初からオンライン講座を作ろうとしていたわけではないところにある。
最初にあったのは、バイクを修理できるという技術だった。
そして、実際に客から依頼を受けてバイクを修理していた。
そこにカメラを置いた。
それだけだった。
ところが動画が増えていくにつれて、収入の入り方が変わっていく。
過去に撮影した動画が売れる。
YouTubeから新しい人がやってくる。
修理動画で使っている工具を紹介できる。
もっと詳しく修理方法を知りたい人には、有料教材を販売できる。
2016年ごろの副業収入は月800〜1,000ドルほど。
その中で、すでに実際の修理作業よりデジタル側から入る収入のほうが大きくなっていた。
これは小さな違いに見えるが、事業としては大きい。
修理の場合、昨日の仕事は昨日の売上で終わる。
今日売上が欲しければ、今日も工具を握る必要がある。
しかし動画の場合、昨日作ったものが今日も売れる。
翌月も売れる可能性がある。
その車種を修理したい人がいる限り、何年後でも売れる可能性が残る。
Mattはバイクを修理しながら、
*「働いた記録が、あとからもう一度お金を生む仕組み」*
を作り始めていた。
Matt Bochnakは2019年、会社員のままHow-To Motorcycle Repairを月4,000〜5,000ドルへ伸ばした
2016年から約3年。
Mattの事業は月800〜1,000ドルほどから、
*月4,000〜5,000ドル*
まで伸びた。
しかも、この時点でもMattは会社員として働いていた。
さらに面白いのは、収入源が一つではなくなっていたことだ。
有料の修理教材。
YouTube広告。
アフィリエイト。
Patreon。
企業スポンサー。
バイクを修理するという一つの技術から、複数の方法でお金が入るようになった。
たとえばMattが動画の中で工具を使う。
視聴者が、
「その工具は何を使っているんだろう」
と思う。
紹介された工具を購入する。
するとMattにも紹介料が入る。
つまりMattは、修理方法だけを売っていたわけではない。
*「Mattがどう直しているか」という一連の行動そのものから、複数の収益が生まれるようになった。*
無料動画を見る人からはYouTube広告。
もっと詳しく知りたい人には有料教材。
同じ工具が欲しい人からはアフィリエイト。
活動を継続的に支援したい人からはPatreon。
企業からはスポンサー収入。
一人の視聴者から無理に大金を取る必要はない。
無料で動画を見る人が増えるほど、その周囲にいくつもの小さな収益源を置けるようになった。
Matt Bochnakは2019年の月5,000ドル規模から自分のバイク用品まで作り始めた
Mattはデジタル商品だけで終わらなかった。
次に始めたのが、物理的な商品の開発だった。
長年同じ作業を繰り返していると、
「この作業、もっと簡単にできないか」
と思う場面が出てくる。
既存の商品では使いにくい。
ちょうどいい工具がない。
必要なものが市場にない。
Mattは、バイクや部品の洗浄などに使える製品を含め、自分の作業経験から生まれた商品を販売するようになった。
ここで順番が逆転しているのが面白い。
普通は商品を作る。
それから、
「誰が買ってくれるんだろう」
と客を探す。
Mattの場合は違った。
何年も修理していた。
その様子を何年も公開していた。
視聴者から質問も届いていた。
どこで困るのかも分かっていた。
そしてすでに、
YouTubeを見る人。
ブログを読む人。
メールを登録している人。
教材を購入した人。
という顧客候補が集まっていた。
その状態で商品を作る。
つまりMattは、
*「商品を作ってから客を探す」のではなく、「すでにいる客が困っているものを作る」*
ことができるようになっていた。
How-To Motorcycle Repairは2022年、Matt Bochnakに月約2万ドルの売上を生んだ
2016年。
月800〜1,000ドル。
2019年。
月4,000〜5,000ドル。
そして2022年。
Mattの事業は、
*月約2万ドル*
を売り上げる規模まで成長した。
最初の月1,000ドル前後から考えれば、約20倍だ。
しかし、この数字以上に面白い変化がある。
このころMattは、
*他人のバイクを預かって修理するサービスを完全にやめていた。*
もともとは、それが事業の始まりだった。
客のバイクを直す。
修理代をもらう。
次のバイクを直す。
その仕事から始まった人間が、数年後には修理代行そのものをやめている。
代わりに残ったのは、
修理動画。
デジタル教材。
YouTube。
アフィリエイト。
スポンサー。
会員収入。
そして自分で作った商品だった。
Mattはバイクという市場から離れたわけではない。
むしろ、ずっと同じ市場にいる。
変わったのは、
*バイクの知識から、どうやってお金を生み出すかだった。*
Matt Bochnakは約20年のバイク経験を「1台分の修理代」以外でも売れるようにした
Mattには、約20年にわたってバイクを扱ってきた経験があった。
だが、20年の経験があるだけでは、自動的に収入は増えない。
普通なら、その経験を使ってバイクを修理する。
1時間働く。
修理代をもらう。
また次のバイクを直す。
腕が良くなれば、料金を上げられるかもしれない。
客も増えるかもしれない。
それでも基本的には、
*「自分が作業する」という条件が売上について回る。*
Mattは、その仕事の途中にカメラを置いた。
すると、それまで毎日消えていたものが残るようになった。
「このネジを先に外す」
「この場所が壊れやすい」
「この工具を使う」
「ここを見れば故障かどうか判断できる」
Mattにとっては何度も繰り返してきた普通の判断だった。
しかし、初めて同じ修理をする人には普通ではない。
分からなければ数時間を失うかもしれない。
間違えれば部品を壊すかもしれない。
修理店へ持っていけば、もっとお金がかかるかもしれない。
だから、その情報には値段がつく。
Mattは新しい技術を発明したわけではない。
*すでに持っていた技術を、本人がいなくても他人へ渡せる形にした。*
これはバイクだけに限った話でもない。
自動車整備。
農業。
木工。
建築。
料理。
縫製。
清掃。
機械修理。
仕事を長くやっている人ほど、本人にとっては説明するほどでもない知識が増えていく。
だが、初めてその問題に直面する人にとって、その「当たり前」が一番知りたい情報だったりする。
月約2万ドルのMatt Bochnakが売ったのは「バイク修理」ではなく修理後にも残るものだった
もしMattが普通にバイク修理を続けていたら、腕のいい修理業者になっていたかもしれない。
客を増やす。
料金を上げる。
スタッフを雇う。
店舗を大きくする。
それも一つの成長方法だ。
Mattは別の方向へ進んだ。
*同じ仕事を、何度も売れる形に変えた。*
1台のバイクを直す。
その修理を撮る。
無料動画として公開する。
詳しい部分を教材にする。
使った工具を紹介する。
視聴者が増える。
スポンサーが付く。
視聴者が何に困っているのか分かる。
その困りごとから自分の商品を作る。
その積み重ねによって、
月約1,000ドルだった副業は、月約2万ドルを売り上げる事業へ変わった。
そして最後には、始まりだった修理代行そのものをやめた。
Mattの商品は、最初から頭の中に完成していたわけではない。
実際に手を動かして仕事をするたびに、その中から次の商品になる材料が生まれていた。
普通なら、仕事が終わればその日の作業は消える。
Mattは、消えるはずだった作業を撮影した。
一度覚えた技術を、自分だけが使うのではなく、他人が使える形にした。
一度終わった仕事を、一度きりの売上で終わらせなかった。
How-To Motorcycle Repairが月約2万ドルまで伸びた始まりは、壮大な事業計画ではない。
ガレージでバイクを直していたMatt Bochnakが、
*その修理をカメラで撮ったことだった。*