1970年代、イギリスの港町ブリストルで、地元紙に奇妙な投書が相次いだ。「夜間、低いエンジン音のような音が止まない」。そこから半世紀、同様の報告は大西洋を渡り、アメリカのトーントン、カナダのウィンザー、オセアニアの内陸部からも寄せられるようになる。共通するのは、音の性質以上に——その音が「全員には」聴こえないことだ。
聴こえる人、聴こえない人
報告者たちの記述は驚くほど一致する。周波数にして数十ヘルツ、アイドリング大型トラックが停止線上で唸り続けるような、体に薄く触れてくる低音。夜間、静かな環境で顕著になり、屋外より屋内で強く感じられる。一方で、同じ部屋にいてまったく聴こえない人もいる。悲鳴を上げたくなるほどの騒音に苦しむ人と、隣に立つ無反応な家族。こうした分離が、ハマー音を単なる「環境騒音」の枠から引き剥がしている。
苦情者の多くは中途失聴者や高齢者に偏らない。聴力検査で正常とされる人々の中に報告者がおり、聴力の側だけでは説明がつかない。